警察庁の発表資料1)によれば、SNSを媒介して犯罪被害に遭った児童の総数は1,486人(2024年)。児童買春、児童ポルノなどSNSに起因する犯罪は、ここ10数年にわたり高水準で推移しています。

一方ニュースでは、SNSによって特殊詐欺闇バイトに未成年が巻き込まれた事例も散見されます。

そんな中、2025年12月、オーストラリアが世界に先駆けて16歳未満のSNS利用を法律で禁止しました。続いてインドネシア、カナダ、イギリスなど、各国でSNS規制の動きが進む中、日本はこの動向をどう見据えているのでしょうか。

スマートフォンでSNSに熱中するイメージ

オーストラリアの取り組み

2025年12月10日、オーストラリアで施行されたのが「オンライン安全法 (Online Safety Amendment Act 2024) 2)です。

16歳未満が対象SNSのアカウントを作ること、また既存のアカウントを保持することを禁止する法律で、国家レベルでの年齢制限としては世界で初めてのものとなります。

項目内容
対象年齢16歳未満
規制対象サービスInstagram、Facebook、TikTok、X、Snapchat、YouTube、Reddit、Threads、Twitch、Kick など
規制対象外のサービスWhatsApp、Messenger、Discord、Roblox、Google Classroom、YouTube Kids など
罰則事業者に最大約51億円の罰金(利用者・保護者への罰則なし)

利用目的に有害性が認められないもの、たとえば「WhatsApp」「Discord」などのメッセージサービスや、「Roblox」などのゲームプラットフォーム、また教育や健康の支援サービスなどは規制対象外となっています。

施行に伴い、対象サービスはユーザーに顔スキャンや身分証明書などによる年齢確認を実施し、16歳未満と判断したユーザーのアカウントを削除。これにより、施行から約1か月で合計約470万件のアカウントが停止または制限されることになりました。

インドネシア・カナダなどでも規制が進む

インドネシア

続くインドネシアでは、子どものSNS利用を段階的に制限する法令3)が可決され、2026年3月28日にまずフェーズ1が施行されています。

項目内容
対象年齢16歳未満
規制対象サービスYouTube、TikTok、Facebook、Instagram、Threads、X、Bigo Live、Robloxの8サービス
罰則事業者に罰金、サービス停止、アクセスブロックなど(利用者・保護者への罰則なし)

カナダ

カナダでは、2026年6月10日、連邦政府により「安全なソーシャルメディア法(Safe Social Media Act)4)が提出されました(未成立)。

項目内容
対象年齢SNS・・・16歳未満
AIチャットボットサービス・・・安全対策義務を課す
規制対象サービスSNS、AIチャットボットサービス
罰則事業者に1,000万カナダドル(約11億円)の罰金など(利用者・保護者への罰則なし)

SNSにおける16歳未満のアカウント保有の禁止、また「ChatGPT」「Gemini」などのAIチャットボットサービスにも安全対策を課す内容です。

具体的には、「同意なく拡散された性的な画像・動画」、「子どもを性的に搾取するコンテンツ、または被害者の二次被害につながるコンテンツ」、「子どもに自傷を促すコンテンツ」など「7種類の有害コンテンツ」を重点的に規制する方針とのこと。

カナダが規定した「7種類の有害コンテンツ」
  • 同意なく拡散された性的な画像・動画(リベンジポルノ等)
  • 子どもを性的に搾取するコンテンツ、または被害者の二次被害につながるコンテンツ
  • 子どもに自傷を促すコンテンツ
  • 子どもへのいじめに使われるコンテンツ
  • ヘイトを煽るコンテンツ
  • 暴力を扇動するコンテンツ
  • テロリズム・暴力的過激主義に関するコンテンツ

その他の地域

その他にも、複数の国が現在施行に向けて動いています。

対象年齢主な対象サービス施行時期
フランス15歳未満主要SNS全般(省令で指定)未定(EU法との整合性審査中)
ギリシャ15歳未満プロフィール作成、他者との交流、コンテンツ共有が可能なプラットフォーム(Facebook、Instagram、TikTok等)2027年1月1日
イギリス16歳未満ソーシャルな交流を目的とするユーザー間プラットフォーム
※メッセージサービス(WhatsApp・Signal等)は対象外
2027年春(目標)
スマートフォンをつかう子どものイメージ

規制の背景

政策を動かしたベストセラー本

オーストラリアで規制のきっかけのひとつとなったのが、ニューヨーク大学の社会心理学者ジョナサン・ハイトによる著書「不安の世代(原題:The Anxious Generation)」でした。

2024年3月の発行直後にベストセラーとなり、日本においても2026年1月に邦訳版が刊行されました。

近年増加傾向にある10代のうつや自殺は、「スマートフォン中心の子ども時代」を過ごした影響なのではないかとの理論を展開しており、子ども・若者のスマホ・SNS利用に対して広く警鐘を鳴らす内容となっています。

これを受けて、南オーストラリア州首相の妻が「何とかすべき」と訴え、それが直接の引き金となってオーストラリアが規制強化へ舵を切ったと複数のメディアが報じています5)

若者世代のメンタルヘルスの変化

実際にアメリカにおいて、2010年代前半から、10代でうつ・不安・孤独感・自傷・自殺念慮・自殺企図が急増しているとの報告6)があります。

日本国内でも、2002〜2004年生まれの未成年3,171人を対象にした研究7)において、インターネットへの依存的・過剰な関わり方が、その後の精神疾患症状と抑うつのリスクを高めうることが示されています。

インターネット・SNSとの関わり方を見直すにあたって、先述のハイト氏の著書は、たしかに注目すべき分析かもしれません。

スマートフォンとメンタルヘルスの相関関係をイメージ

日本はどう動くのか

現在の状況

日本では現時点(2026年6月)で、年齢に基づく一律のSNS利用禁止は法律で定められていません。

Instagram・TikTok・X・Facebookなど主要SNSは、各社の利用規約で13歳未満の利用を禁じています8)が、これは事業者独自のルールであり、生年月日の自己申告だけで確認されているため、実効性は低い状態です。

総務省の方針

これについて総務省の有識者会議9)では、使用年齢を一律に制限していいのか生年月日の自己申告だけで十分か各事業者に年齢確認を義務付けるかどうかについて、プライバシーやセキュリティの問題を含め議論が続いています。

2026年夏をめどに論点が整理され、「青少年インターネット環境整備法」の次期基本計画(2027年策定予定)に反映される見込みだそうです。

法令整備に向けての議論をイメージ

浮かび上がる課題

このインターネット・SNS利用規制の世界的な流れを受けて、課題もまた浮かび上がっています。

VPNや偽年齢申告に抜け穴がある

多くの専門家に指摘されているのは、現行の年齢確認の方法では不十分ではないかという点10)

年齢を偽証したり、VPN(別の国や地域のサーバーを経由させてネット接続する)を使ったりなど、アカウントを偽る方法はいくつもあります。

規制をすり抜けた場合の安全機能が手薄になる

規制に抜け穴がある限り、すり抜ける子どもは一定数出ます。

プラットフォームが「その年齢層は存在しない前提」で設計するようになると、規制をすり抜けて使用している子どもへの安全機能がかえって手薄になります。

プライバシー保護への懸念が残る

年齢確認を厳格化し、身分証明などを強化することで、むしろプライバシーが侵害されるのではないかという懸念もあります。

子どもの「知る権利」や「教育を受ける権利」

国連子どもの権利委員会は、デジタル環境へのアクセスは子どもが情報を得たり、学んだり、社会に参加したりするための基盤だと位置づけています11)

SNSの利用規制は、こうした権利を子どもから取り上げることにもなりかねません。

弱い立場の子どもが締め出されるリスク

孤立した子どもやLGBTQの子どもにとって、SNSが唯一の支援ネットワークになっている場合があります。

ユニセフ(国連児童基金)は、一律にアクセスを禁止することによって、そういった子どもが支援に繋がれなくなるのではないかと指摘しています12)

規制か、それとも別の方法か

子どもを守るために、何をどこまで制限すべきか。規制に代わる方法はあるのか。

オーストラリアをはじめ各国の試みはまだ始まったばかり。答えが出るにはまだ時間がかかりそうです。

本記事の内容は健康情報の提供を目的としており、医療行為・診断を目的としたものではありません。体の不調がある場合は医師にご相談ください。

記事作成日:2026/6/15

参考情報
  1. 警察庁「令和6年における少年非行及び子供の性被害の状況」
    https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/syonen/pdf_r6_syonenhikoujyokyo.pdf
  2. オーストラリア政府eSafety Commissioner「Social media age restrictions」
    https://www.esafety.gov.au/about-us/industry-regulation/social-media-age-restrictions
  3. インドネシア通信・デジタル省「Peraturan Menteri Komunikasi dan Digital Nomor 9 Tahun 2026」
    https://jdih.komdigi.go.id/produk_hukum/view/id/1007/t/peraturan+menteri+komunikasi+dan+digital+nomor+9+tahun+2026
  4. カナダ政府「Bill C-34, the Safe Social Media Act」
    https://www.canada.ca/en/canadian-heritage/services/safe-social-media-act.html
  5. CBS News「Australia’s new social media ban for kids started with a mom saying, ‘Do something!’」
    https://www.cbsnews.com/news/australia-social-media-ban-kids-teens/
  6. Twenge JM, Psychiatric Research and Clinical Practice, 2020,
    https://psychiatryonline.org/doi/10.1176/appi.prcp.20190015
  7. Narita Z et al., Schizophrenia Bulletin, 2024,
    https://academic.oup.com/schizophreniabulletin/article/51/1/198/7686570
  8. TikTokコミュニティガイドライン
    https://www.tiktok.com/community-guidelines/ja/accounts-features
  9. 総務省「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 青少年保護ワーキンググループ(第4回)論点整理案」
    https://www.soumu.go.jp/main_content/001069938.pdf
  10. Australian Child Rights Taskforce「Open letter regarding proposed social media bans for children」2024年10月9日
    https://apo.org.au/sites/default/files/resource-files/2024-10/apo-nid328608.pdf
  11. 国連子どもの権利委員会「一般的意見第25号(General Comment No. 25)」2021年
    https://www.ohchr.org/en/press-releases/2021/03/un-committee-issues-recommendations-protect-childrens-rights-digital
  12. UNICEF「Age restrictions alone won’t keep children safe online」2025年12月9日
    https://www.unicef.org/press-releases/age-restrictions-alone-wont-keep-children-safe-online