スマートフォンを手に取るたび、ついSNSを開いてしまう、という人は少なくないのではないでしょうか。かくいう筆者もその一人です。

総務省の調査1)によれば、YouTubeの利用率は80.8%、Instagramが52.6%、Xが43.3%、TikTokが33.2%と、日本のインターネットユーザーの約8割がなんらかのSNSを使っていることが分かっています。

利用時間の平均は35~40分、10代・20代に至っては、1日のインターネット利用時間が7時間を超えているのだとか。

いまや生活にすっかり根づいたSNSですが、使い続けることに何か弊害はあるのでしょうか。

スマホを使うさまざまな人のイメージ

依存を誘うSNSの設計

SNSプラットフォームは「変動比率強化スケジュール」を使っています。変動比率強化スケジュールとは、「報酬が不規則なタイミングで与えられる仕組み」を意味する心理学用語。

スロットマシンがその典型例です。何回引けば当たるかわからないから手が止まらない、「次こそ当たるかも」という期待感が行動を繰り返させます。

SNSでは、たとえば画面を下に引っ張って離すと更新される「Pull-to-refresh」というデザインが採用されています。この動きはまさに、スロットマシンのレバーを引く動作を連想させるものです。

また、「いいね」やコメントがいつ届くか分からないという点も、繰り返しチェックしたくなる要素の一つでしょう。

このようにSNSには、依存性を強化する仕組みが散りばめられていることが分かります。「つい見てしまう」「気づけば長時間見ていた」というのは、ある意味で必然性があるとも言えるでしょう。

依存性を高める仕組みのイメージ

使いすぎると孤独感が高まる

では、SNSを使いすぎることには、どのような影響があるのでしょうか。

約7,000人の成人を9年間追跡したオランダの縦断研究2)では、SNSを見るだけ、あるいは投稿や交流などのアクティブな使用で、いずれも使用量が増えるほどに孤独感の高まる傾向が見られました。

研究者はこう述べています。「孤独な人はSNSに向かうが、それがさらに孤独の炎をあおる可能性がある」と。

孤独感が高まると解消のためにSNSをさらに使おうとし、そのことがさらに孤独感を高める。このことは、24,798人を対象としたメタ解析(複数の研究結果の統合解析)3)でも確認されています。

9,269人を対象としたメタ解析4)では、やめようとしてもやめられない依存状態に陥ると、うつや不安感、ストレスに繋がりうることも示されました。

孤独感を解消するためにSNSをする人のイメージ

孤独感と孤立化の関係

先ほど「孤独な人はSNSに向かう」との言葉を引用しましたが、インターネットユーザーの約8割、国民全体の約67%がSNSを使用していると言われる今日、現代人の多くは実際に孤独を抱えているのでしょうか。

もちろんすべての人が孤独感の解消を理由にSNSを使い始めるわけではないでしょう。ただここで、孤独感と現代社会の関係について示唆する概念が浮かびます。ドイツの政治哲学者ハンナ・アーレントが提唱した「アトム化」です。

「アトム化(原子化)」とは、個人が社会的なつながりを失い、孤立した存在になる現象を意味します。主な原因は、社会の産業化・グローバル化、あるいは社会的・経済的な苦境によって既存の共同体が機能しなくなることだと言われます。

昨今、人口が都市部に流出し地域の繋がりは薄れ、終身雇用の枠組みが崩れたことで「会社」という共同体も霞みました。その中で「困ったときに頼れる人間関係がない」と感じる人は少なくないでしょう。また、政治への不信感が高まるにつれ、「自分の声は社会に届かない」という無力感を覚える人も増えがちです。

実際に内閣府の調査(2024年)5)では、孤独感について「しばしば・常にある」「時々ある」「たまにある」と回答した人が計39.3%に上っています。

ここまでで言えるのはつまり、現代社会において個人のアトム化(孤立化)が広がっているのではないか。そしてそれは潜在的な孤独感と無関係ではないのではないか、ということです。

まただからこそ、失われた帰属意識や存在意義のようなものを、SNSで取り戻そうとする向きがあるのではないでしょうか。

孤立化が進む都市部のイメージ

孤立の弊害

こうしてSNSに帰属感や居場所を求めたとき、懸念されることがもう一つあります。陰謀論・フェイクニュースへの脆弱性です。

SNS上の陰謀論コミュニティは「共有されたアイデンティティ」と帰属感を提供することで大きくなっていきます。「仲間」を得た安心感が先立つとき、「本当に正しいのか」という批判的思考は重要視されません。それどころか、反論を受けるほどに過激化が深まるという逆効果も確認されています6)

スマートニュース・メディア価値観全国調査(2025年)7)でも、動画系SNSを主なニュース源とする人ほど陰謀論的思考が高い傾向が示されています。

メタ解析8)によれば、陰謀論を信じる傾向は、不安・うつ・ストレスなどメンタルヘルスの悪化とも相関があるとのこと。孤独感を覚えやすい社会SNSの依存性陰謀論やフェイクニュースとの親和性メンタルヘルスへの悪影響。これらは現代社会において、螺旋のように複雑に絡み合い、すでに小さからぬ悪循環を形成しているのかもしれません。

SNS依存や孤独感などが繰り返される悪循環のイメージ

SNSから離れ、繋がりを増やす

悪循環から抜け出そうとする時、対策としてまず考えられるのは「SNSから離れる」ことです。

ハーバード大学医学部の研究9)では、1週間のSNSデトックスで不安症状が16.1%、うつ症状が24.8%、不眠症状が14.5%有意に減少しました。

また、「自分は何かに属している」という帰属意識や居場所を、SNS以外で実感することにも意味があるでしょう。たとえば、地域の活動・趣味のサークル・ボランティアなどに参加し、現実での繋がりを少しずつ増やすことが、その足がかりになりそうです。

一方で、たとえ対面ではなくても、メッセージを直接やりとりする一対一のオンラインコミュニケーションであれば、幸福感を高めうることも示されています10)


SNSで得られる帰属感は、一方で孤独感を高め、フェイクニュースや陰謀論に巻き込まれる危険性もはらんでいることが分かりました。

SNSの使用量や使い方を見直すこと、また「何かに属している」という大きな帰属意識、「誰かと繋がっている」という小さな連帯感をリアル社会に求めていくこと。これらこそ、現代人が本来求めている安心感への鍵なのかもしれません。

本記事の内容は健康情報の提供を目的としており、医療行為・診断を目的としたものではありません。体の不調がある場合は医師にご相談ください。

記事作成日:2026/6/14

参考情報
  1. 総務省「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」 (2025年)
    https://www.soumu.go.jp/main_content/001017160.pdf
  2. Roberts, J.A. et al. “The Epidemic of Loneliness: A 9-Year Longitudinal Study of the Impact of Passive and Active Social Media Use on Loneliness.” Personality and Social Psychology Bulletin, 2025.
    https://doi.org/10.1177/01461672241295870
  3. Fam, J.Y. & Männikkö, N. “Loneline
    ss and Problematic Media Use: Meta-Analysis of Longitudinal Studies.” JMIR Mental Health, 2025. https://doi.org/10.2196/60410
  4. Boer, M. et al. “Problematic Social Media Use in Adolescents and Young Adults: Systematic Review and Meta-analysis.” JMIR Mental Health, 9(4), 2022.
    https://doi.org/10.2196/33450
  5. 内閣府「孤独・孤立に関する実態調査(令和6年)」(2024年)
    https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zenkokuchousa/r6.html
  6. Mikhaeil, C.A. “The 4 Stages of Conspiracy Theory Escalation on Social Media.” Scientific American, August 8, 2023.
    https://www.scientificamerican.com/article/conspiracy-theories-how-social-media-can-help-them-spread-and-even-spark-violence/
  7. スマートニュース株式会社「スマートニュース メディア価値観全国調査2025」(2025年)
    https://about.smartnews.com/ja/news/2408.html
  8. Bowes, S.M., Costello, T.H. & Tasimi, A. “The conspiratorial mind: A meta-analytic review of motivational and personological correlates.” Psychological Bulletin, 149(5-6), 2023.
    https://doi.org/10.1037/bul0000392
  9. Calvert, E. et al. “Social Media Detox and Youth Mental Health.” JAMA Network Open, 2025.
    https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.45245
  10. 理化学研究所「ソーシャルメディアが精神的健康に与える影響を解明」npj Mental Health Research(2024年12月)
    https://www.riken.jp/press/2024/20241220_2/index.html