この記事のポイント
  • コグニステップ」は足踏みしながら頭を使う、道具いらずの脳トレ
  • 大規模調査でも認知機能全般への効果が確認されている
  • 好きな音楽に合わせてやると楽しさアップ

「あれ、なんだっけ……」名前がすぐに出てこなくなった。階段を上るとちょっと息が切れる。そろそろ体のことが気になってきた——。

そんな60代・70代の方にご紹介したいのが「コグニステップ」です。

足踏みしながら頭を使う、それだけ。道具もいらないし、広い場所もいりません。簡単なのに運動不足の解消と脳トレが同時にできて、しかも研究で効果が確認されている方法なんです。

コグニステップって何?

コグニステップは、国立長寿医療研究センターが開発した「コグニサイズ1)」というプログラムのひとつです。

コグニサイズとは、認知(Cognition)と運動(Exercise)を組み合わせた造語。運動しながら計算やしりとりなどを同時に行うことで、脳への刺激を高めることを目的としています。

同センターでは、すでに認知機能の低下が見られるMCI(軽度認知障害)の高齢者を対象に、コグニサイズを取り入れた運動プログラムを週2回・90分、12ヶ月実施。その結果、記憶力と言葉の流暢さに改善が見られています2)

1回につき90分はなかなかハードですが、つまりこれだけしっかり取り組めば、衰えが始まってからでも機能改善の効果が見られるということですね。

なぜ体と頭を同時に使うといいのか

コグニステップのベースになっているのが「デュアルタスク(2つの作業)」という考え方です。

体を動かすときは運動を司る脳の領域が、計算や記憶をするときは前頭葉などが働きます。こうして両方を同時に動かすことで、脳の領域が幅広く活性化されます。これが認知機能の維持・改善につながるポイント。

65歳以上を対象にした87本の研究をまとめた大規模なメタ分析(GeroScience, 2025)3)でも、デュアルタスクトレーニングは「運動だけ」「脳トレだけ」と比べて認知機能全般への効果が最も大きかったことが確認されています。

実際にやってみよう

(近江八幡市公式YouTubeチャンネルより)

ステップのバリエーションはさまざまありますが、ここでは基本の「足踏みしながら3の倍数で手を叩く」やり方(動画内では6:10頃から)についてご紹介します。

まずは動画を参考に、ストレッチでウォームアップしてからコグニステップに進みましょう。

STEP1
足踏みをしながら数をかぞえる

左右の足を交互にリズムよく上げ下げします。イスに座ったままでもOK

ひざを腰の高さくらいまで上げるとなおよいでしょう。

足を上げ下げするごとに数をかぞえましょう。

STEP2
3の倍数のときだけ手を叩く

3の倍数のときだけ手を叩きましょう。

STEP3
そのまま30までかぞえて終わる

途中で間違っても大丈夫。止まらずにそのまま30までかぞえましょう。

慣れてきたらスピードアップしてみたり、「5の倍数で手を叩く」「手を叩く代わりに計算する」「数ではなくアイウエオを言う」など、ちょっとずつ変化を加えると脳への刺激を保つことができます。

「コグニサイズ」でYouTube検索すると、ここで紹介したもの以外にも自治体などが制作した動画がさまざまヒットしますので、ぜひ参考にしてみてください。

より楽しく音楽に合わせて

より楽しんで長く続けるために、好きな音楽に合わせてやってみるのもおすすめです。リズムに乗ることで足踏みのテンポも安定しやすくなりますし、なにより気持ちが上がります。

どんな曲が合うの?

さきほどの実践動画を基準とした場合、だいたいBPM110~120(※BPM=1分間の拍数)の曲がコグニステップにぴったり合いそう。たとえば以下のような曲が、同じぐらいのテンポです。

曲タイトルアーティストBPM
三百六十五歩のマーチ水前寺清子114
モンキーマジックゴダイゴ116
DIAMONDSプリンセスプリンセス112
Uptown FunkMark Ronson ft. Bruno Mars115
NEW DANCEXG114

60年代の国民的ヒット曲「三百六十五歩のマーチ」から、2016年にグラミー賞を受賞した「Uptown Funk」まで、楽しくリズムに乗りやすそうな曲をピックアップしてみました。

余談ですが、XGさんの楽曲を加えたのは、女優の池波志乃さんが毎朝XGのアルバムを聴きながら運動しているというインタビュー(参照:美ST ONLINE)を読んだのが理由のひとつ。リズミカルなので、運動のお供におすすめです。

リズムに合わせるポイント

(日本クラウン 演歌・歌謡曲 公式チャンネルより)

「三百六十五歩のマーチ」を例にしてみましょう。

歌詞の「ワン・ツー・ワン・ツー」のリズムで右・左・右・左と足を上げ下げするとかなり速くなってしまうので、「ワン」のところで1拍叩くとちょうどいいテンポになります。

♪「」あわせ「」~ 「」るいて「」ない 「」から「」るいて 「」くんだ「」~

カギカッコのところで1拍叩くイメージ。まずは足上げせずに、手を叩いてリズムをとるところから始めるといいかもしれません。

(Mark Ronson公式YouTubeチャンネルより)

「Uptown Funk」は洋楽ですが、ちょうどいいところで分かりやすく1拍が入るので案外リズムがとりやすいです。英語なので歌詞に引っ張られなくて済むのも◎。

30まで数えたらまた1に戻って繰り返すのもいいですし、30以降そのまま曲が終わるまで数え続けるのも難易度が上がっておもしろそうです。

もちろんBPMの目安からはずれた曲でも問題ありません。「この曲が好き」「なんか体が動く」という感覚を大切に、まずは楽しんでみてください。

まずは1日5分ぐらいからでもOK

「1回90分やらないと意味がない」なんて思わなくて大丈夫。30数えるまでを数セットやる、好きな曲を1曲流す間だけやる、それだけでも十分なスタートです。

長く続けるのがなにより大事。ひとりでコツコツやるのもよし、家族や友人と一緒に笑いながらやるのもよし。脳トレだからと堅苦しくならず、遊び感覚でやってみるのが長続きしやすいポイントかもしれませんね。

本記事の内容は健康情報の提供を目的としており、医療行為・診断を目的としたものではありません。体の不調がある場合は医師にご相談ください。

参考情報

  1. 国立長寿医療研究センター「認知症予防運動プログラム コグニサイズ」
    https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/kenshu/27-4.html
  2. 公益財団法人長寿科学振興財団「第4章 認知症の予防 4.運動の視点から」
    https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/ninchisho-yobo-care/h30-4-4.html
  3. Mičič S et al., GeroScience, 2025
    https://link.springer.com/article/10.1007/s11357-025-02091-w

記事作成日:2026/5/10