「テレビばっかり見てたらバカになるよ」

子どもの頃に親から言われた記憶がある方も多いのではないでしょうか。当時は「うるさいな」と思いながら聞き流していたかもしれません。

ところが最近の研究を見ると、この言葉はあながち的外れでもなかったことがわかってきました。「バカになる」という表現は乱暴ですが、長時間の視聴が記憶力や思考力の低下と関連するというデータが、大規模な研究で積み重なっています。

しかも気になるのは、そのリスクが「かなり長時間見た場合」だけの話ではないという点です。

研究では何がわかっているのか

「1日3.5時間超」で言語記憶が低下

2019年、英国の大規模調査1)が50歳以上の3,662人を6年間追跡した結果を発表。1日3.5時間以上テレビを視聴している人は、そうでない人と比べて6年後の言語記憶がはっきりと低下していることが確認されました。

「運動不足や健康状態の悪さが原因では?」という疑問も検討されましたが、それらの影響を取り除いて分析しても、やはりテレビの視聴時間が影響しているという結果になりました。

「1日4時間以上」でリスクが大きく上昇

35件の研究・約129万人のデータを統合した2025年のメタ分析2)では、テレビ視聴1日4時間以上で認知症や記憶障害の発症リスクが大きく上昇することが確認されました。

「2時間以上」でも無視できない

さらに約9万人のデータをもとにした2026年の最新研究3)では、1日2時間以上のテレビ視聴が、社会的な交流や趣味が少ない高齢者の認知症リスクを高めることが示されました。

視聴時間はすべて「1日のトータル時間」です

いずれの視聴時間も「平日は平均何時間?」「週末は合計何時間?」といった形で合計を測定したもの。

つまりこれらは連続視聴時間ではなく、1日あたりのトータル視聴時間であることがポイントです。

なぜ長時間視聴が脳に影響するのか

では、なぜテレビを長時間見ると脳に影響が出るのでしょうか。研究者らはいくつかのメカニズムを指摘しています3)

理由① 「脳の休息」状態が続く

テレビは、たとえクイズやニュースなどのように考えさせられる内容でも、基本的には「受け取るだけ」でいい設計になっています。

自分で答えを出したり、相手に返したりする必要がないため、刺激が強いように見えて、実は思っているより脳を使っていないのです。

理由② 座りっぱなしで血流が下がる

テレビを見ている間は、基本的にずっと座ったり寝転んだりしています。

そのため脳への血流も低下し、脳細胞に届く酸素や栄養も減ってしまいます。そのことが認知機能にダメージを与える原因の一つではないかと考えられています。

理由③ 夜間視聴で睡眠が乱れる

就寝前のテレビは体内時計を乱し、睡眠中に脳の老廃物を排出する「グリンパティック系」(脳内の清掃システム)の働きを妨げる可能性があります。

つまりテレビを長時間見続けることで、脳が「深く考えない」「酸素・栄養が届きにくい」「老廃物が排出されない」という状態に陥りやすくなるということ。

こうして考えると、認知機能が少しずつ衰えていくのも、あながち不思議ではないかもしれませんね。

「見ながら寝落ち」は特によくない

「テレビを見ているつもりが、気づいたらうとうと寝てしまっていた」

誰しも一度は経験があるでしょう。これは、テレビを見ている間いかに脳が休息しているかということの証拠とも言えるかもしれません。

この「テレビあるある」、実は二重の意味で問題があります。

問題① 睡眠の質が下がり、疲労が回復しない

寝落ちした後にテレビの音と光が入り続けることで、深い眠りに移行できず、うまく疲労を回復できません

「寝た気がしない」「昼間ぼーっとする」が続く場合、この習慣が一因になっている可能性があります。

問題② 光を浴び続けて、疾患リスクが上がる

睡眠中にテレビの光を浴び続けることで翌朝のインスリン抵抗性が高まり、糖尿病・高血圧・肥満のリスクにつながりやすくなることが、ノースウェスタン大学の研究(63〜84歳対象)4)で示されています。

テレビを見ながら寝落ちしてしまうと、脳へのダメージだけでなく、疲労回復の妨げになったり、さらには糖尿病などのリスクが上がってしまったりと、ダブルパンチ、トリプルパンチになる可能性があるのです。

「やめる」のではなく「意識的に減らす」

さて、ここからが本題。「じゃあ、テレビをいっさいやめましょう」というのでは極端です。目指すのは惰性で見ている時間を減らし、見る時間を自分でコントロールすること

STEP1
まず「思い当たる節」を確認する

こんな症状に心当たりはないでしょうか。

  • 言葉がすっと出てこないことが増えた
  • 昼間眠くなることが増えた
  • 寝落ちすることが増えた
  • なかなか疲れが抜けない
  • 以前より物忘れが気になる
  • 体重が少しずつ増えてきた
  • 医師に血糖値を指摘された

これらに心当たりがあれば、もしかするとテレビの視聴時間が影響しているかもしれません。

STEP2
1日の視聴時間を記録してみる

まずは「自分が実際に何時間見ているか」を知ることから始めましょう。

テレビをつけた時間と消した時間をメモして、1日のトータル視聴時間を調べてみてください。記録してみて初めて「こんなに見ていたのか」と気づくものです。

STEP3
「今より1時間減らす」を目標にする

記録をもとに、小さな目標を設定しましょう。いきなり半分にしようとすると逆にストレスになってしまうかもしれません。

たとえば今4時間見ているなら、まず3時間を目指す。少しずつ「見ない時間」に慣れていくのが、無理なく続けるポイントです。

テレビから離れる3つのコツ

① 惰性でつけている時間を特定して削る

視聴記録を見ると、「なんとなくつけていた」時間帯が必ず見つかります。

食事中・家事の合間・寝る前がよくあるパターン。「別に見なくてもいい時間」を真っ先に削ると目標に近づきやすいでしょう。

② テレビの代わりを決めておく

たとえば「夜9時以降は見ない」と決めても、手持ち無沙汰になるとついまたつけてしまいかねません。その時に何をするか先に決めておくと、暇を持て余すのを防げます。

読書(雑誌などでもOK)クロスワードパズル家族との会話など、脳を能動的に使う行動が理想的。散歩ストレッチ植物の世話など、座りっぱなしにならない工夫を加えるとさらに良いですね。

動画配信(YouTubeなど)はどうなの?

受け身で見続けるという点ではテレビと大きな差はないと考えられます。

「なんとなく流し見する時間」が積み上がりやすいため、同様に注意が必要です。

じゃあ、テレビゲームやネット・SNSはどう?

テレビゲームは、判断・操作・空間認識など脳を能動的に使うため、テレビ視聴とは別物です。

実際に、ゲームをしている高齢者はそうでない人と比べて記憶力や処理速度が高く、脳の活動量が多いことが脳スキャンの研究5)で確認されています。

ネットニュースを読んだりSNSに投稿・コメントしたりすることも、テレビより脳を使っています。

ただし、「画面をただスクロールするだけ」「なんとなく流し読みするだけ」ではテレビ視聴と同じになってしまいますので、そうならないよう気を付けなくてはいけません。

③ いっそ環境を変える

リモコンを引き出しにしまう、テレビにカバーをかける、寝室にテレビを置かないなど、環境を整えるのも一つの手。

「見ようと思わないと見られない」状態にすることで、惰性の視聴はずいぶん減るでしょう。

減らすことで見つかることもある

習慣を変えることは、なかなか難しいものです。だからこそ、無理せず少しずつ慣れていくステップが大切

ちなみに筆者もテレビの時間を減らすべく、代わりにお茶を入れて雑誌を読む時間を作るようにしました。

そうしてみると、自然と本屋に目が向くようになったり、いろんな種類のお茶に興味が出てきたりなど、生活習慣が少しずつ変化してきて、ちょっと新鮮な気持ちを味わっている今日この頃です。

「テレビをやめる」のではなく、「テレビがついていない時間に、何か小さな楽しみを見つける」——そう考えると、少し気が楽になりませんか。一緒にゆっくり、試してみましょう。

本記事の内容は健康情報の提供を目的としており、医療行為・診断を目的としたものではありません。体の不調がある場合は医師にご相談ください。

参考情報

  1. Fancourt D, Steptoe A. Scientific Reports, 2019.
    https://www.nature.com/articles/s41598-019-39354-4
  2. Dejakaisaya H, et al. PLOS ONE, 2025.
    https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0323863
  3. Li et al. Alzheimer’s & Dementia, 2026.
    https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/alz.71259
  4. Mason IC, et al. PNAS, 2022.
    https://doi.org/10.1073/pnas.2113290119
  5. Zhang Z, et al. Frontiers in Human Neuroscience, 2017.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5702357/

記事作成日:2026/5/11