「玄関の段差がつらい」「お風呂で滑りそうで怖い」
要介護(要支援)認定を受けて、そんな困りごとを抱えているなら、今の住まいを少し変えるだけでも、ぐっと暮らしやすくなるかもしれません。

介護保険には、手すりの設置段差解消などのリフォーム費用を補助してくれる「住宅改修費支給制度」(支給限度額は20万円)があります。

この記事では、どんな工事が対象になるのか費用はいくら戻ってくるのかなど、知っておきたい制度の仕組みや申請手順を分かりやすく解説します。

介護保険住宅改修とは?【対象工事一覧】

「住宅改修費支給制度」は、要介護・要支援の認定を受けた方が、住み慣れた自宅で長く安全に暮らせるよう支援するためのものです。

​「古くなったからキレイにしたい」といったような一般的なリフォームとは違って、この制度で対象になるのは国が定めた6種類の工事のみとなります。

対象となる6つの工事と費用の目安

下の表は、基本的な工事内容と、一般的な費用の目安です。

工事の種類具体的な内容通常の費用目安(例)
1. 手すりの取付け玄関、廊下、トイレ、浴室にてすりを設置1〜10万円
2. 段差の解消敷居をなくす、スロープを設置、床をかさ上げ5〜20万円
3. 床材の変更滑りにくい床へ変更(畳→フローリングなど)5〜20万円
4. 扉の取替え重い開き戸を引き戸や折れ戸へ変更5〜20万円
5. 便器の取替え和式トイレを洋式へ変更(暖房便座等は対象外)10〜40万円
6. 付帯工事手すり設置のために壁を補強するなど工事内容による

費用は家の構造・地域・資材価格で大きく変わります。

限度額20万円で何ができる?【負担例】

介護保険の住宅改修では、「生涯で20万円まで」の工事費が支給対象になります。

利用者はそのうちの1割〜3割(自己負担額は所得によります)を負担し、残りの7割〜9割が介護保険から支給される仕組みです。

費用の負担イメージ(1割負担の方の場合)

工事費用自己負担額
(1割)
介護保険からの支給
(9割)
手すり設置など
5万円
5,000円4万5,000円
上限いっぱい
20万円
2万円18万円
上限オーバー
30万円
2万円+超過分10万円
12万円
18万円(上限額まで)

分割利用もOK

条件は「生涯で20万円まで」なので、一度ですべて使い切る必要はありません

まずは「手すりだけ(5万円)」を取り付け、数年後に「段差解消(10万円)」工事をする、というようなことが可能です。

リセット特例

転居した場合や、要介護度が大幅に上がった場合(3段階以上)には、再度20万円の枠が使えることがあります。

住宅改修を使うと、デイサービスなどの予算は減ってしまう?

いいえ、減りません。
住宅改修費20万円は「生涯で使える別枠」として、毎月のケアプラン予算(デイサービスや訪問介護の限度額)とは完全に分かれています

ホームヘルパーや福祉用具レンタルなどで介護保険の上限額ギリギリまで使っていても、住宅改修は別枠で申請できるので安心してください。

申請から支給まで【改修ステップ】

一番大切なルールは、「工事を始める前に申請すること(事前申請)」です。

事前に申請せず工事をしてしまうと、全額自己負担になってしまいますので、そうならないために次のステップを参考にしてみてください。

STEP1
ケアマネージャーなどに相談

まずは「何に困っているか」「どこが使いにくいか」を、ケアマネジャーさん地域包括支援センターに相談しましょう。

専門家の視点で、適切な改修内容を検討してもらえます。

超過分を助成金で軽減できることも

限度額の20万円を超える分は全額自己負担ですが、自治体によっては超過分を対象とした助成金制度を実施していたりもします。

使える助成金がないかも含めて相談してみましょう。

STEP2
見積もり・プランを作成してもらう

工事の施工業者に家を見てもらい、見積書と図面を作成してもらいます。

施工業者については、ケアマネジャーさんや地域包括支援センターが相談時に紹介してくれることが多いです。複数の業者に見積もりを頼むことも提案してくれるかもしれません。

イチから自分で業者を探すようなことはほとんどありませんので、安心してください。

STEP3
市区町村事前申請する

申請書、見積書、「住宅改修が必要な理由書(ケアマネジャーさんなどが作成)」、工事前の写真などを役所の窓口へ提出します。

STEP4
工事実施・完了

役所の審査が通って承認が下りたら、改修工事に進みます。

STEP5
市区町村で事後申請する

工事が完了したら、ふたたび役所の窓口へ領収書や工事後の写真を提出します。

STEP6
補助金が支給される

審査後、指定の口座に補助金が振り込まれます。

償還払い(いったん全額払って後で戻ってくる)」か「受領委任払い(自己負担分だけ払う)」かは、自治体や業者によって異なります。

よくある失敗例とFAQ【注意点】

せっかくの制度をうまく使うために、よくある失敗例も覚えておくと安心です。

自己判断で工事をしてしまった・・・

「急いでいたから」と申請せずに手すりを付けてしまい、後から請求しても認められなかったケースです。

必ず事前に申請して承認をもらうようにしましょう。

対象外の工事も一緒にしてしまった・・・

「ついでに壁紙もきれいにしたい」「古くなった給湯器も変えたい」。
これらは「老朽化のリフォーム」とみなされ、介護保険の対象外になります。

対象工事とそうでない工事は、見積もりの段階でしっかり分けるようにしましょう。

大家さんに無断で工事をしてしまった・・・

自宅が賃貸の場合や、持ち家でも名義が別(同居のご家族名義など)の場合は、所有者の「承諾書」が必要です。

後々のトラブルを防ぐため、早めに許可を得ておきましょう。

入院中でも工事できる?

基本的には自宅で生活していることが条件ですが、退院に向けての改修なら認められる場合があります(支給は退院後となります)。

入院中に自宅の改修工事を検討される場合は、まず自治体に相談してみてください。

DIYで手すりをつけても保険の対象になる?

材料費のみ対象になる場合がありますが、その場合には、適切な施工かどうかの審査や理由書作成が必要です。

理由書作成などは専門家でないと少しハードルが高いので、やはりケアマネージャーさんなどに相談するのが安心でしょう。

介護保険の住宅改修は、住まいを「状況に合わせる」選択肢

介護保険の住宅改修は、住み慣れた自宅での暮らしを長く続けていくための頼れる仕組みです。

制度を無駄なく活用するためには、「工事を始める前の相談と申請」が何より大切。まずは担当のケアマネジャーさんや地域包括支援センターに、「家のことで困っている」と相談することから始めてみてください。

お住まいの自治体の決まりを確認しながら一つひとつ不安を解消し、安心・安全な住まいを整えていきましょう。

参考情報

この記事は以下の公的機関・信頼できる情報源を参照して作成しています。最新の詳細や自治体ごとのルールは、必ずお住まいの市区町村窓口でご確認ください。

※記事作成日:2026/2/17
※制度は改定される場合があります。申請前に必ず最新情報をご確認ください。